えつよの本棚

読んだ本から感じたことを自由に綴ります。

「Q健康って?」よしもとばなな ☆健康のダイナミズム☆

「Q健康って?」よしもとばなな

Q健康って?

この本は、「健康とはなにか」がスッキリ明快にわかるような本ではないし、「これをやれば健康になれる」系の本でもない。

読みながら、「自分にとっての健康ってどんな状態だろう?」と、自然と探究心が湧いてくるような本だと思う。

 

自分の身体や人生は自分にしか生きられないのだから、自分にとっての健康もまた、自分にしかわからないのではないだろうか。

 

病院で「あなたは病気です」と診断されたとしても、それがどんなに大変な症状のある病だとしても、その人を身体だけでなく全体で見たら、どうも幸せそうで人生めっちゃ充実してるようにしか見えない、みたいなことはあり得る。私はそういう友を一人知っている。(そして幸せそうなまま、宇宙へ還っていった。)

そういう人は、そういう状態は、「健康」って言っていいんじゃないだろうか。

 

そういう、固定された価値観にとらわれない「健康」についての話が、この本にはたくさん語られている。

 

よしもとばななさんと、身体のスペシャリストの対談(編集者の方も時折会話に入る)が四つ、また、ばななさんのご友人のがん闘病記が巻末に掲載されている。

 

対談の中で共通して多く語られていたのは、というか私が個人的に気になったのは、「プロセス(過程)であって、目的や結果ではない」ということだった。

健康は目指すものではない、ということだ。

 

例えば風邪をひいたとして。

熱が出て辛い症状が出て、一見、健康ではないと思うかもしれない。

でも、風邪の症状はウィルスやなにかにしっかり反応しているということだから、反応できる身体である、という面から見れば、とても健康な状態と言えるのではないだろうか。

身体が弱りすぎて鈍感になると、日常的な風邪で反応できなくなり、ある日突然、溜まった分が大きな病気として現れたりするのではないだろうか。

 

身体は、色々な反応をする。それが痛みや不快感として感じられることもある。

でもそれは、バランスを取るための身体の大事な機能ではないか、と私は思っている。

その反応のダイナミズムが、そのプロセスが、健康、ってことなんじゃないだろうか。

 

この本の対談者として参加されている、ロルファーの田畑さんのロルフィング施術を受けたことがある。

施術を受けてから自分の身体の感覚を観察するようになって、私は前述の「症状(身体の反応)はバランスを取るための機能」と思うようになった。

ロルフィングを受けるにあたって、主に気になっていた身体の状態は、右膝の違和感(関節が上手く噛み合っていない感覚、歩きづらさ)だった。

数年前からのもので、整骨に通って一旦治っても、またすぐに違和感が戻ってきてしまうので困っていたのだ。

ロルフィングに通っている間も、違和感が無くなったりまた出てきたりしていた。

10回受ける基本の施術が完結した後、半年から一年くらいは身体の変化は続くということだったので、様子を見ていた。

ある日、また右膝の違和感が出てきて、またか…と少し落胆していたのだけど、その違和感がまるで身体の中を流動体になって移動するように、腰や左足に移動していったのだ。

その時、あちこちが痛くなったのに、「あ、これは全然大丈夫なやつだ。」と思えたのだった。身体がなにか調整している、と感じたのだ。そんな風に感じたのは初めてだった。

そのうち、気づいたら右膝の違和感は現れないようになっていた。

以前その症状に困っていたことも忘れるくらいに。

 

なんだかロルフィング体験記みたいになってしまった。笑

 

とにかく、身体のバランス調整機能はかなりすごいので、もっと信じよう、とこの本を読んで改めて思った。

深く、多岐にわたる面白い話がたくさん載っているので是非オススメしたい。